其の八 天津大爆発


「天津大爆発」? 映画の題名でもあるまいに なんじゃそのタイトルは、天津が爆発ってなんの事だ?と普通ならなるのであるが 2015812日に発生した天津の臨海工業地域 (こちらでは濱海地区と言うが)で発生した爆発事故は、すっかりその名前でニュースの表題も定着してしまった。

 実は、事故翌日の13日朝会社で 某国人幹部から「夕べ 濱海で大きな爆発があった」と聞いた時は、「あ、そう よくある事だけど濱海でもあったの・・それは大変だね。」と あまり関心もなく聞き流していた。何せ 天津市中心部から40Km以上離れているのだから 爆発の音も光も届かないし 取りあえずの影響が無いのある。その後 系列会社の社長がやってきて「夕べの爆発 すごいですよ!携帯の微信に多くの映像が出ています、見て下さい。」それを見て事態の深刻さを初めて理解できた。何せ爆発の火球が高層ビルより大きいではないか!!しかも近場にマンションもあるし 仕事でもよく通る場所でもある。我々のお客さんにも少なからず建物被害が出ているらしい。どうも現場までの高速道路は、交通規制が引かれているらしいという噂、地下鉄は駅がダメージを受けて不通となっているらしい。までは分かったが それ以上の情報は無い、とりあえず午後に行けるところまで行ってみよう!と言うことになった。

 某国に来て十数年、大きな交通事故、伝染病の蔓延、反日デモの嵐、大火災、殺人、身近に何でも発生し 自分の目で見て 対応もして来たものだから 大抵の事では動じなくなってしまっている。神経麻痺である。しかし 今回の爆発は、並ではない。直感で初日の政府発表17人死亡、数百人怪我のような小さな規模でないと感じられた。関連会社の社員がガラスで頭にけがをして病院へいったが 「その程度の怪我は対応していない、重傷者しか受け入れていない」と言われたそうであるので 病院も相当混乱している様子だ。ちなみに 天津の濱海地区とは、田舎町ではない。貿易港、工業団地、近代住宅地などが集中するエリアで 天津市中心街よりGDPの高い地域なのだ。近代的なビルが並ぶ複合都市エリアなので 大病院も相当な数がある。日本でいえば千葉港と幕張メッセの新都市を10倍大きくしたようなエリアと考えてもらえばいい。そこでそう言う状態なのである。

 午後から車で移動し、取敢えず爆心地に近いお客さんから訪問することにした。高速道路の封鎖は無く、我々は爆心地近くの場所まで辿り着くことができた。幸いなことに日系企業の多くは、爆心地から2q以上離れている工業団地に点在しており、お客さんの工場で一倍近い企業でも爆心地から3.5qであったから 火球熱線の直接の影響はなかった。しかし6q以上離れている倉庫でも窓ガラスや扉があちこち吹き飛んで破壊されていたから、小型の戦術核程度の破壊力があったはずだ。10か所近くのお客さんを廻って、爆発の衝撃波と言う現象の摩訶不思議な面を見た。一般的に衝撃波を受けて破壊され易いのは、爆心地に対面する面のガラスや扉のはずであるが 実はそうではない。対面しない側の窓や扉が壊れ 対面している側は何ともないケースも多かった。それと衝撃波がビルの合間を抜けながら一極集中して、爆発地点から相当離れている百貨店の風除室の天井をバラバラに破壊しているケースもあった。周辺のビルは、ガラスも扉も壊れていないのである。当然の事ながら爆心地に近いほど、窓ガラスや扉・シャッターの被害が大きいが(ペラペラシャッターは全滅である)。 3.5q地点の工場では、窓だけでなく鉄製に見える工場の大扉が全てひしゃげていた、・・・普通の窓は、壊れていないのに何故こんな大きな扉が壊れるの?? よく見ると、この扉・・表面は薄いアルミ板で中は発報スチロールでできている。なんだ、えらい安く作っているもんだな。変な所に感心してしまった。

 さて、最後に直接のお客さんではないが、最も爆心地に近い日系のショッピングモールに行って見ることにした、訪問済のお客さんの話だと公安と軍が道路封鎖していて近づけないらしい。しかし我々は、付近の住民のふりをしながら 封鎖の合間を縫ってモールまで何とか歩いて辿り着くことができた。周辺の高層マンションは、窓ガラスと一階の扉などは全滅である。しかも こちらの人気マンションは、薄楼と呼ばれる造りが多い。すなわち日の当たる南面と裏手の北面を1世帯で占有して光の周りが良いので人気なのである。その代り薄型の建物構造になってしまうので構造的に弱い、今回の場合は、爆心地に対面しているガラスは全て吹き飛び 衝撃波は裏のガラス面に抜けていくので北側もほとんど破壊されてしまっている。下手をすれば住民が爆風と共に外に放り出される事態もあっただろう。多分であるが 爆心地からわずか500mしか離れていないマンション群では、爆風が強烈な勢いで表から裏側に抜けているはずである。微信の映像に 頭部がめちゃくちゃになった両親とみられる2名の大人(すでに死亡している様子)の脇で その子供らしき人物が携帯電話で何やら一生懸命連絡している映像があったが 今回の爆発、最初は普通の火災現場に見えるので周辺の高層マンションの住人は、野次馬の様に窓から消火活動を見ていたはずである。そして最初の大爆発、続くさらに大きい爆発は、わずか30秒後であるから 「こりゃ見ている場合じゃない」と気が付いた時には“時すでに遅し”である。スマホで撮っていた映像と共に吹き飛んでいるから、近場から撮影された映像の微信へのUPは一つもない。

 携帯電話微信(ウィチャット)にUPされた爆発現場を捉えた映像は、撮影した本人が生き残った証でもある。その幾つかの映像を見ると爆発から衝撃波到着してガラスが割れるまで3秒前後、爆発時の衝撃波は音速を超えている場合が多いので つまり1Km以上離れているマンションで撮影されていることが分る。どの映像にも共通しているのは、一回目の爆発までは野次馬気分で見ているが、2度目の大爆発で 撮影者本人に戦慄が走って逃げようとしている所だ。また映像には、火球のすぐ近くに2棟の高層マンションが映っていた。そのマンションは、多分爆心地から500メートル圏内の“万科清水港湾マンション”の北側の2棟だと思われる。入居率は分らないが24棟位のマンション群なので相当な人が住んでいたはずである。このマンション群の映像が事故後の報道写真に一切出てこないのは不思議であるが、状況が悲惨で報道規制を受けている可能性も否定できない。地下鉄9号線の「東海路駅」は、地上駅であるが、爆心地より600m離れており爆心地との間には、高架の高速道もある、今回駅舎は、爆撃を受けたように破壊されホームの電車が大破する程であった。それを考えれば、爆心地から500mの薄楼のマンションはひとたまりもないはずである。

 天津市政府発表では、爆発事故1週間後の死亡者数114名 行方不明57人となっているが 実際はどうなのだろう。事故二日目に比較的信頼できる筋からの情報で 死者は、少なくとも500600人 行方不明は30人と言うのがあった。病院関係者の集計だから あながちデマでもなさそうだ。2000人規模と言う話もあるが この手の事故は、デマも相当飛び交うので どれが信頼できるか分らない。しかし 政府発表が一番信頼できないのは確かである。

 爆心地周辺300m以内は火の海であり、税関、派出所、運輸会社ビル、倉庫などがある。某国の場合 これらの建物には、宿直がおり保安と呼ばれる夜警が多く寝泊まりしている。派出所は多くの警官が当直にいたはず、1万台の被害が出た車の保管場所にも多くの保安がいたはずである。近くのマンション住人とそれに消防4個大隊300人〜400人と言われる人間が爆発に巻き込まれた。広島、長崎の原爆でも爆心地近くにいて、死を免れた多くの市民がいたので大きな爆発でもすべてが全滅と言う訳ではない。しかし、どう考えても政府発表の数字は、桁が一つ違うように操作されているような気がしてならない。

 もう一つ、何故こうも住民地区に近い所に、あの様な危険物保管が可能だったかである。400tの認可限度制で、何故3000tも保管されていたのか。

一般の民間企業では、申請さえもできないであろうが 某国の場合 法治国家ではないので人間関係が強ければ 超法規的な行為をどんどん可能にできる「利便性?」がある。中央政府もここまで事態が大きくなってしまっては、国内外に対する世間体も考えて 責任の所在をある程度明確にしなければいけなくなってしまった。ほとんどが国営企業で 認可も国がするからすべての責任は政府にあるのであるが トカゲのしっぽ切りをしてでも世間体は整えたいところだ。この爆発会社、なんと江沢民時代の天津市長の弟の息子が董事長で その嫁は、政府のNo7、張高麗の娘ときている。そんな良い血筋を持った会社であれば どのような裏認可でも取れそうであるが、一旦認可が出てしまえば後はやり放題なのでこう言うことになってしまう。今後 近ペイ君がこの事件をネタに 江沢民派の張高麗に対し任期満了を待たず早めに処分するかどうかも興味の尽きない所である。現役で江沢民派の常務委員を蹴落とすところまでやるか トカゲのしっぽ切りで終わるか これも庶民には関心があるところであるが 本当の意味で責任が誰にあるのかは、表に出ないだろうし政治のさじ加減で処分も変わるのだ。

政権が変わるような事でもない限り、某国では真実は判らないままなのである。 (2015/8/25 記)

TNT火薬で27トンに相当すると言われた今回の爆発事故の現場、小型の原爆ぐらいの威力があったのでは・・

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